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  • 名店の技術は受け継がれる?

    上野界隈の天麩羅店と言えば、本牧亭近くの「天鈴」や湯島が本店の「天庄」等が評判の店と言える。

    食通の叔父が贔屓にしていた山下と言う天麩羅店があり、子供の頃何度か連れて行ってもらった思い出がある。今もそのあたりを通ると立派な店構えが思い出されるが、今は無き天麩羅の名店である。

    新橋にも橋善と言う天麩羅の繁盛店があった。歴史のある老舗天麩羅店であり名物のかき揚で知られていた。店を閉めた理由は知らないが繁盛をしていただけに惜しまれ、その味を懐かしむ人も少なく無い。

    天麩羅店の味はその店の個性であり天麩羅職人の腕による処が大きい。何らかの事情で店が閉店してしまえば、もうその天麩羅を味わう事は出来ない。しかしその技と伝統を習得した職人がいればその味を引き継ぐ事が出来るかもしれない。名店で修業をして暖簾分けや独立をした天麩羅店は、更に独自の工夫を加えて味を競っている。

    浅草で創業した「稲ぎく」はその後日本橋茅場町に移り、お座敷天麩羅として高級天麩羅店の代名詞となった。日が暮れる頃になると黒塗りの高級車が店の周りに連なり、庶民には敷居が高く近寄りがたい店であったが日本料理としての天麩羅の名を高めた一軒であった。その後場所を移し規模を縮小して店舗を構えていたが、休業となっているようである。

    「稲ぎく」で修業をした天麩羅職人は独立して多くの天麩羅店を構えている。日本橋「だぼ鯊」の主人は「稲ぎく」時代に浅草の寮に住んでいた頃の話を懐かしく話してくれた物である。「稲ぎく」が廃業とならなければ自分で店を持つことは無かっただろうと謙遜していたが、確かな腕で天麩羅好きを喜ばせている。

    入谷にある小野照先神社前「からくさ」の主人は、「だぼ鯊」の高橋氏の弟弟子にあたる。たまたま前を通った「稲ぎく」の当時の繁盛ぶりを見て門をたたき天麩羅職人を目指したと言うから面白い。下町にある気の置けない隠れた名店である。

    天政は千代田区猿楽町に店を構える有名店であったが、現在は丸ビルに移ってお座敷天麩羅の伝統を守っている。天政出身では逢坂、すず航等が評判の店である。

    銀座天一で修業し独立して店を構えた職人は多い。銀座天亭、いわ井、天朝等々店名を上げれば切がないほどである。それぞれが独立後も創意工夫を行い、名店で修業した技術を持って評判を得ている。

    だいぶ前の話になるが昼に急に天麩羅が食べたくなり電話を入れると、上手く席が空いていてそれではと急ぎ茅場町の「みかわ」を訪ねた。店の前には開店前から客が並んでいたが、開店時間が過ぎてもなかなか店が開かない。どうしたのかと思い待っていると、路地の向こうにタクシーが止まり主人が下りて来た。どうやら昨晩の夜遊びが過ぎたのか遅刻をしたようで照れながら並んでいる客に挨拶をしての登場である。客の方は待たされはしたが、主人である早乙女哲哉の憎めない人柄とその後に提供された天麩羅のうまさに満足をしてしまう。味で売る店は天麩羅その物ならずとも味がある物である。

  • 天麩羅ダネの花形は?

    「月も朧に白魚の篝もかすむ春の空」

    ご存知歌舞伎三人吉三で知られるお譲吉三の名せりふである。

    江戸から明治の初めの頃は篝火を炊いて白魚漁をする風景は江戸の風物詩であったらしい。細くて白い優美な女性の指は白魚のような指とたとえられる。昔の人は上手い事を言う物であるが、それだけ当時の人にとってはなじみのある魚であったようだ。白魚の天麩羅は江戸前天麩羅にとって欠かせない天種と言える。

    芝エビは東京芝浦で多くとれた事から芝エビと呼ばれるようになったと言われている。車エビの仲間に属するが車エビより小ぶりで何匹か連ねて衣を付けて揚げて天丼として提供する店もある。かき揚の具としても使われる江戸前天麩羅の代表的食材でもある。

    昔は沢山とれたとされる白魚も芝エビも今は東京で漁獲する事は出来ない。アナゴも江戸前天麩羅の代表選手であるがこちらは天麩羅種として現在でも東京湾で漁をされる貴重な魚でもある。築地市場にも羽田沖産のアナゴとして入荷され江戸前の鮨店や天麩羅店で使用される。

    関西の天麩羅店では骨切したハモを揚げた天麩羅があったりグジ(甘鯛)の切り身を天麩羅にしたりもする。その土地により天麩羅種も変わって来るものである。

    イカの天麩羅は産地や季節によりヤリイカを使ったりアオリイカになったりと味わいが変わるので面白い。

    天麩羅にするエビは車海老が最上と言われていて店によって産地や大きさにこだわっている。「天政」は天政サイズと言われるさい巻(小ぶりの車海老)を薄い衣を付けて揚げる。伊勢エビの専門店等では伊勢エビの天麩羅を提供する店もあり、カニ料理の専門店ではズワイガニの足を天麩羅で提供したりもする。

    エビフライ等エビ好きで知られる名古屋にはエビの天麩羅をオニギリの具にした「天むす」がある。この「天むす」は三重県津市の「千寿」と言う店が発祥とされるが他にも元祖を名乗る店もあり中京地区の名物となっている。余ったエビの天麩羅を切って暖かいオニギリの具にしてまかない食として食べたのが始まりとされる。

    今は各店がアカシャエビと言う小ぶりのエビを天麩羅にして「天むす」を提供している。冷めても美味しい事から弁当としてデパートや駅でも売られている。

    富山では特産の白エビをかき揚にして提供される。静岡では桜エビのかき揚げは定番となる。

    ブラックタイガーやバナメイと言われる輸入エビも天麩羅ダネとして人気がある。ランチ定食等にリーズナブルなエビの天麩羅として提供される事もある。

    ちなみにエビを表す漢字としては海老を用いるのは伊勢エビ等歩くタイプのエビで車エビ等泳ぐタイプのエビは蝦の字を用いるのが正しいらしい。いずれにしても天麩羅における花形はエビと言う事になるのだろうか。

  • 天麩羅店は油も売りもの?

    戦国大名の齋藤道三は一介の油売りから身を越し美濃一国の領主となったと語り継がれている。当時から油は重要な物資として流通していた事になる。行燈に使用して燃やす事で明かりとして利用されてもいたし食用等色々な用途があったらしい。

    天麩羅に使用される油には胡麻油の他には、かやの油、椿油、等が主であったが菜種油や現在ではコーン油等のサラダ油も合わせて使用される。

    江戸前の天麩羅には胡麻油が欠かせないが焙煎をして風味を強くしたものや生のまま絞った太白油等が特徴を持って使用される。

    搾る前に高温で時間を掛けて煎れば煎るほど油の色は濃くなり香ばしい香りも強くなる。定温焙煎ゴマ油は低い温度で焙煎するので透明感のある琥珀色とナッツのような甘く香ばしい香りが特徴となる。太白ゴマ油は生のままゴマを搾り精製した物で無色である。癖が無く旨味のあるすっきりとした味わいで天麩羅の素材を生かすと言われている。

    常に新しい油を使用する為にこまめに油を取り換える店もあれば少し天麩羅を揚げなじませた油に新しい油を混ぜて使用する店もある。

    搾り方も臼挽き、玉締め搾り等と工夫されそれによって味わいも変わる。玉締めは小さな圧力で時間を掛けて搾り自然に沈殿した物を和紙でろ過して作られる。無理な圧力を掛けずに手間暇をかけ優しく絞るので油の風味を損なわないと言われている。

    元々ゴマ油は酸化安定性に優れた油でゴマリグナンと言う抗酸化物質を含む。ゴマリグナンの成分は一般にも知られるようになったセサミンやセサモリン、セサミノールでありビタミンE、カテキン、ポリフェノール同様に抗酸化作用があると言われている。ゴマ油自体はリノール酸とオレイン酸が主成分であるがこちらも色々な効能が注目されている。天麩羅は油料理ではあるが良い油で揚げられた物は少々食べ過ぎても胃もたれせず胸やけもしないゆえんである。天麩羅店によっては塩で食べる事を薦める事があるがこれは油の質や素材の良さを楽しんでもらいたいと言う処であろう。

    最近は天麩羅に付けて食べる塩も抹茶と混ぜて抹茶塩、カレー粉と混ぜてカレー塩、紫蘇の粉末や花山椒の粉末を混ぜて提供する店もある。

    最近はコシアブラやフキノトウ等の山菜の天麩羅にオリーブ油が使われるケースもあり軽くあっさりと食される。

    天麩羅はトンカツやメンチカツのようなフライとは違い動物性の油を使ってあげる事は無く食材自体も脂っこい物は使用しない。魚貝類や野菜を多く使う天麩羅はフライ物と比べてヘルシーな揚げ物と言える。

    また魚を食べるのが苦手でも骨を除いて食べやすく調理した天麩羅なら食べられると言う人も少なく無い。魚の余分な水分が油分と置換され魚の生臭さも無くなってしまう。天麩羅を蒸し料理とたとえる人もいるが油で揚げる事により外を衣でコーティングして中の具材を蒸すようにふっくらとジューシーに調理して行くからである。いずれも油を熟知した職人ならではの技と言える。

  • 天麩羅の魅力はつきない?

    東京における天麩羅の歴史や普及において特記される店がある。昭和5年創業の銀座天一は多くの文人や著名人に愛された名店である。戦後吉田茂の命で官邸に揚場を設け進駐軍司令部との交渉を円滑に進めるよう天麩羅外交が行われたがそれを受け持ったのが天一である。バーナード・リーチやフランク・シナトラは来日するたびに天一を訪れたと言う。

    またこの店はカレー塩と言ってカレー粉に塩を混ぜた物を天麩羅に付けて食す食べ方を考案したりもしている。天麩羅を抹茶塩、山椒塩、等で味あわせる店も多い。抹茶塩等塩で天麩羅を食させるのは鰹節だしの天つゆが使えない精進料理で良く用いられる食べ方である。新宿の老舗船橋屋ではローズマリーやオレガノ等7種のハーブを使ったハーブソルトを提供している。天麩羅が洋風になったような気がするのもおつな物である。

    変わり揚げを楽しめる店も増えて来ている。小柱を海苔で巻いて揚げる小柱の磯部揚げ、短冊に切ったイカにタラコを挟んで揚げたイカモミジ。シイタケにエビのすり身を詰めた物、干し柿のチーズ巻、ハスの穴に明太子を詰めて揚げた天麩羅。真薯を湯葉で包んで揚げた物や長芋に梅肉を挟んで海苔で巻いた会席料理風の物までさまざまである。

    最近西洋料理店ではオープンキッチンが多くなってきている。シェフズテーブルなるシェフが客の見ている前で調理して料理を提供する試みが評判を得ている店もある。客は料理の出来るまでシェフの調理方法を五感で感じながら出来立ての料理を楽しめる新しいスタイルで評判を得ている。

    天麩羅専門店はと言うと何のことは無い昔からオープンキッチンで客はシェフズテーブルよろしく揚げるしぐさを見ながら音と臭いを感じて揚げたての天麩羅を楽しんでいたわけである。このシェフならぬ天麩羅職人の技はノウハウがいっぱいで素人には分からない手間がかかっている。したがって簡単に分かるものでは無くとてもそれを詳しく説明する事は出来ない。

    お座敷天麩羅で知られる天政の仕事ぶりを例にざっと見てみると天政サイズと言われるさい巻エビの頭を取りしっぽの部分を形よく切って整える。殻をむいて背ワタを取り揚げた時にエビが丸まらないように切れ目を入れ塩水に10~15分漬け込み布巾にて水気を取る。全卵3に卵黄1の割合で冷水に溶き冷やしておいた薄力粉を振るいで振ってダマを除き太箸にてさっと混ぜる。少々上に粉が浮いているような状態にて箸を持ち上げると箸の先から流れるような粘度に溶いて行く。衣を付けて揚げる事になるのだが味見をしながら調理する事は出来ない。職人の経験と技術により瞬間に調理される言わば一発勝負のやり直しのきかない料理である。天つゆは醤油、みりん等を調合した元だれを3~4か月熟成させだし汁で割って使用される。天麩羅は1に素材2に油3に職人の腕とよく言われる。下ごしらえに手間暇をかけて細工は流々いざ揚場と言う舞台へ。江戸から続く食のエンターテナー天麩羅の魅力はつきない。

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