社長の呟き 2022年3月号「現代コロナ考」

はし休め

日本橋倶楽部会報3月号(第511号)

【 三月号】

「現代マスク考」

 

「日に千両、鼻の上下(うえした)、へその下(した)」

日本橋には現代に換算して日に約一億円もの商いが三つあった。なるほど、目は歌舞伎(堺町・葺屋町)、口は魚河岸(本船町、小田原町、安針町)、臍の下は元吉原(葺屋町)と言うわけだ。しかしその後、鼻の上下、臍の下も浅草(猿若町)、築地、新吉原(日本堤)へとそれぞれ移転してしまい、今やその面影は無い。

二年間も新型コロナとの戦いが続き、マスクの世界市場は70億ドルを突破、さらに毎年10%以上増えると言われる。日本ではインフルエンザと花粉症は新型コロナウィルスによって駆逐され、“ハクション”は“ワクション”という造語に取って代わられてしまった。この先DNAまで変異させられると、マスクをつけた子供が生まれてくる妄想さえ抱いてしまう。

マスクの派生語である“マスカレード”は身分、既婚を問わぬ恋愛の場、仮面舞踏会を意味している。ヴェネツィア人は疫病ペスト蔓延にも関わらず、マスカレードへ出かけたが、巣ごもりの日本人は“マスク華麗度”に磨きをかけ、目も口も閉じ、鼻で笑っている。 小堺