ふるさと食文化の旅:群馬

群馬

群馬県は関東地方の北西部に位置し、四方を山に囲まれている。南東部だけが関東平野に向かって開けている。利根川・渡良瀬川の支流は淡水魚が生息し、重要な動物性たんぱく質の供給源となっている。江戸時代には火山灰地を利用した桑の栽培とそれを利用した養蚕の盛んな地域であった。内陸県で、夏の雷と晩秋から春先にかけての空っ風は有名である。群馬県では、キンピラゴボウにうどんという素朴な組み合わせの食べ方もある。

郷土料理

魚

江戸川・渡良瀬川・江戸川の支流では、イワナ・ウグイ・ヤマメ・コイ・フナ・アユ・ドジョウ・ウナギなどが漁獲され、その料理が発達している。ウグイは焼き干しに加工され、魚田・煮浸し・甘露煮・南蛮漬けなどに利用される。4~5月に漁獲される小形のフナは甘露煮にし、保存食としている。ナマズは天ぷら・蒲焼き・ナマズ鍋などの料理がある。1~2月の寒い時期のコイは美味しく、あらい・うま煮・こいこくなどで食べる。重要なたんぱく質源となっている。ニジマス(ギンヒカリ)・コイ・アユの養殖は盛んに行われている。

肉

養豚、酪農がさかんである。「上州和牛」は群馬県内で肥育された和牛をいい、きめの優れた肉質である。群馬県の「赤城牛」は不飽和脂肪酸が多く、融点が低い滑らかな肉質である。ブランド豚には「あかぎ愛豚」「赤城ポーク」「黒豚(とんくろう)」などがある。これら豚肉料理で群馬県の活性化の運動が立ち上がった。

野菜

群馬県は小麦粉中心の郷土料理があり、うどんは1日に1度は食べる習慣がある。

「おっきりこみ」は、小麦粉の麺とたくさんの具を入れた汁もので味噌仕立てと醤油仕立てがある。

「下仁田ネギ」は太く大きなネギで、江戸時代には将軍に献上した。高崎市の「国分ニンジン」「陣田ミョウガ」、富岡町の「宮崎菜」も有名である。

「陣田ミョウガ」は、陣田地区から高崎へ出荷したのがきっかけとなって有名になった。色・形・味のすべてに優れている。

下仁田特産の「下仁田ネギ」は「根深ネギ」の代表で、すき焼きには格好の野菜である。

伝統料理

小麦粉の利用として生まれた「すいとん」

第二次大戦後の食糧難時代にコメの代用として、小麦粉を団子状にして汁に入れた「すいとん」は、「つっこみ」ともいい、家庭の夕食にはしばしば供される。小麦粉を固めに捏ねて焼いた「上州焼餅」、群馬県の観光寺院・水沢寺の門前のうどん屋で供された「水沢うどん」のような小麦粉を使った伝統料理が多い。「おっきりこみ」は、小麦粉の麺を入れた具だくさんの汁物で、味噌仕立てと醤油仕立てがある。

行事食

元旦は雑煮が中心

群馬では正月の供え餅は、豆殻の上にのせる。こうすることにより、縁起がよいと伝えられている。最近は大小の平な椀に短冊に切った餅・ダイコン・コンブをのせる。群馬の人は、祭りには焼き饅頭に味噌をつけて、素朴な味を楽しんでいた。

「小麦粉団子」を串に刺し、味噌を塗って焼いた「焼きまんじゅう」は、祭りや行事の際に用意された。

食のこぼれ話

水沢うどんの話

「水沢寺」は、坂東33箇所・16番目の札所で、推古天皇の勅願により創建された。その門前には10軒ほどのうどん屋がある。「水沢うどん」は、400年以上の伝統の味を守り続け、関東のお遍路さんの歴史を秘めている。捏ねた小麦粉の生地は1日間熟成させ、伊香保の湧き水を使うのが特徴である。冷やしうどんとして食べるのが基本である。