石川
石川県は中部地方の北部に位置する。北部は能登半島に面し、海の幸が豊富である。山間部の両白山地は他県との境をなしている。石川県は金沢藩の支配下のもとで、「加賀百万石」の城下町として発展した。石川県の中心地である金沢は、京文化の影響を受け、「北陸の京都」と呼ばれているほど上品な街であるが、金沢独自の文化も育てている。加賀友禅・小松綸子・九谷焼・金沢蒔絵・金銀箔細工などは金沢の文化として発展したものである。金沢の近江市場は、周辺の農作物や海産物が集まるところであり、金沢市民の重要な市場となっている。
郷土料理
「イワシの糠漬け」「フグの糠漬け」など、福井のサバの糠漬け「へしこ」と似た保存食が発達しているし、富山の「かぶらずし」や「大根ずし」に似た漬物も発達している。
伝統料理
前田藩の余裕が加賀料理を生み出す
前田藩の城下町の余裕が、鋭敏な食味感覚と高度の料理技術の加賀料理を生み出した。代表的な加賀料理の「治部煮」は、毎日の惣菜としても、ハレの日の惣菜としても、庶民が作り出した滋味豊かな料理である。「治部煮」は、豆腐・四季折々の野菜・カモ肉を使い、小麦粉でとろみをつけた上品な料理である。
一方、保存食として作る「イワシの糠漬け」は「こんかいわし」といわれる。塩辛いので好き嫌いの多い保存食である。「フグの糠漬け」も金沢の伝統食として残っている。さらには、フグの肝臓を数年糠漬けしたものは珍味として知られている。
行事食
加賀の料理は人の絆に大切
祭りの日に作る「加賀の祭り料理」は、自分たちの家族だけで食べるのではなく、親戚や知人にも贈る分も作る。手作り料理の中に人間関係を温めるという意味が、加賀の祭り料理の中には存在している。
春と秋の祭りには「魚の押しずし」は欠かせない。春はイワシ、秋はサバ・シイラ・タイの押しずしが作られる。雑煮は焼いた角餅を使う。正月にはフナの尾頭の白焼きか煮つけが欠かせない。
フグの卵巣の糠漬けは安心なのか
フグ料理は、その毒による中毒が心配である。「トラフグ」の場合、内臓でも精巣には毒性成分(テトロドトキシン)が存在していないから、フグ料理では精巣の塩焼きや鍋の具として利用される。しかし、卵巣には毒性成分を含むので食べないのが原則である。石川県の郷土料理に、この卵巣の糠漬けがある。3~4年の間に毒性成分は消失して、安心して酒の肴となる。