福井
福井県の人々が利用している魚介類の種類は、隣接する石川県の人々の利用するものに似ている。昔から若狭湾の小浜と敦賀の港は、京都の北の玄関口でもあり、多くの物資がこの2つの港を基点に各地に運ばれていた。小浜に水揚げされたアマダイやマサバは、北前船で運ばれた北海道の水産物と同様に、京都の食文化に影響していることはよく知られている。若狭湾は、リアス式海岸を形成しているので水産資源の豊富なことも知られている。福井県民は古くから商人気質を身につけていたことで、北海道から運ばれた昆布を独自な方法で保存し、北陸や関西ばかりでなく関東の料理店へ昆布を提供していた。また、永平寺町には道元が開山した永平寺があり、県民の日常生活や食文化にも少なからず影響を及ぼしている。
郷土料理
小浜の「浜焼きサバ」「小鯛のささ漬け」は古くから珍重されている。「小鯛のささ漬け」は、レンコダイを樽に入れて、塩と酢で漬けたものである。小さな樽に詰めた状態で市販されている。塩漬けしたマサバを、糠・味醂・醤油に漬け込んだ美浜名物の「へしこ」は、福井の人々にとって酒の肴や茶漬けの具として楽しんでいる保存食品である。
福井の食文化には永平寺の影響を受けた精進料理がある。永平寺の修行僧の食事をつくる役職の典座が作る「だし」は食材を活かしたものであり、参考にしている料理人も多い。精進料理の基本は、豊富な植物性の食材を利用した「一汁三菜」「一汁五菜」「二汁五菜」などに仕上げることである。
伝統料理
永平寺の精進料理の影響を受ける
福井の人々の生活は、曹洞宗の大本山「永平寺」の影響を受けているといわれている。常に「永平寺」の僧侶を救う精神が住民の心に存在した。福井の人々の伝統料理は、北陸の厳しい気候風土から生まれている。
「葉ずし」はアブラギリの葉で、1~2口で食べられる大きさの五目ずしの握りを包んだものである。葉ずしのすし飯の具にはシイタケ・カンピョウ・高野豆腐・ヒジキ・ニンジンなどの煮つけが入れられる。5~6月に水揚げされるサバは浜焼きにし、農繁期の栄養補給源として貴重だった。イワシやサバを塩漬け後、糠漬けにした「へしこ」は、冬のたんぱく質供給源でもあった。
行事食
正月料理には棒だらや数の子などの保存食を利用
正月料理には、打ち豆なます・寒ダラの煮しめ・煮豆・数の子・野菜の煮しめを用意する。棒ダラは10日ほど前から水につけておいて軟らかくし、甘辛く煮たものを用意する。数の子は塩数の子を使い、塩出ししてからあっさりと醤油で煮る。昔からの雑煮には「青カブラなどの具を輪切りにして、削り節をのせた味噌味の雑煮」がある。
けんちん汁
精進料理として鎌倉の建長寺で考案された「けんちん汁」がある。これは、寺院の料理を作る役職の典座が、修行僧のために精進料理をつくっていたところ、自分たちが食べる材料がなくなったことから作られた工夫の汁物だった。