長野
長野県は本州の中部地方のほぼ中央に位置する内陸県である。飛騨・木曽・赤石の各山脈、浅間山や八ヶ岳などの高い山々に囲まれ、6つの盆地と木曽谷に分けられている。盆地の気候は朝夕の寒暖の差が大きい。それを利用した寒天作りは、海がないのに何故かと不思議に思うほど盛んである。長野県は水系により3つの地域に分けられている。南西部は木曽川、諏訪から飯田にかけての南東部は天竜川、北部は信濃川の3つの地域である。信濃川の支流は松本付近の犀川、上田付近の千曲川が流れている。
長野の食糧生産を支えてきているものとして、乾燥した空気を生かしたリンゴ・ソバ・高原野菜の栽培・凍り豆腐・寒天などの製造がある。
郷土料理
「利休煮」は、古くから絶品といわれている。茶人「利休」の名がついているが、ただ利休が好んだのではないかと想像してつけた名であるという。醤油・味醂・砂糖で調味して煮詰めた佃煮風のものである。
銘柄牛では「信濃蓼科牛」「木曽牛」がある。「信濃蓼科牛」は、脂肪と赤身肉のバランスのよい肉質を作り上げている。小谷野豚は北安曇郡小谷村の大自然で放牧・飼育された豚であり、その肉質は高品質で希少価値があるとの評判である。
伝統野菜の中で最も知られているのは「野沢菜」である。宝暦年間(1751~1763)に、ある僧侶が大坂(大阪)から「天王寺カブ」の種を長野に持ち帰り栽培したのが、野沢菜の始まりといわれている。長野の漬物としては野沢菜の名が知られている。
伝統料理
四季折々の餡を包んだお焼きは今でも人気である
長野県の代表的伝統食のおやき(焼餅)は、現在はデパートの物産展で人気のある食べものである。小麦粉の皮で、味噌漬けや野沢菜など四季折々の野菜を包んで焼いたものであるが、現在はゴマ味噌・小豆・カボチャなどを包んだものも登場している。
コイ・ワカサギ・イワナなどの淡水魚の料理は、信州の人の動物性たんぱく質供給源であった。
伝統的な信州そばは、辛味ダイコンで食べるのが信州スタイルである。
行事食
年取り魚は塩ザケも塩ブリも
正月には貴重な白米を使い、「年取り魚」として塩ザケ・塩ブリを使う。「年取り魚」の塩ザケは新潟から運ばれ、塩ブリは富山県から運ばれてくる。正月には「年取り魚」を必ず食べるという古くからのしきたりがある。雑煮には塩ブリと茹でた餅を入れる。味噌仕立てが多い。正月用の餅つきは、12月30日に行い、白い餅・草餅・豆餅などを作る。
長野のそば(信州そば)
長野の食文化を紹介する際、そばについては切り離なすことはできない。麺状にする「そば切り」の発祥は、江戸時代の書物に記録されているらしい。信州説・甲州説・塩尻説があるとのことである。
一茶が「信濃では月と仏とおらがそば」と詠んでいるように、辛味ダイコンで食べるそばは、関東風の食べ方よりもはるかに美味しく食べられる。漬物を入れた「すんき(酢茎)そば」、そば粉を団子状にして薄くのばし、刻みネギの入った味噌を包む「染越そば」など珍しい料理もある。