日本橋倶楽部会報8月号(第503号)
【八月号】
「蛍の光」
新型コロナ感染防止のため、昨年から各地で蛍狩りは中止されているが、むしろ蛍にとっては”光”都合なのかもしれない。米映画「哀愁」(原題”Waterloo Bridge”1940年)は前年の「風と共に去りぬ」でオスカーを手にしたヴィヴィアン・リーとロバート・テーラーの悲恋物語である。劇中のダンス曲として使われていたのがスコットランド民謡にして、準国歌でもある「オールド・ラング・サイン」。ハイドンやベートーヴェン、シューマンも編曲を手掛けている程で、日本でも1881年に小学唱歌集に「蛍」(蛍の光)として採用されている。この映画の日本公開は勿論、戦後の1949年。古関裕而による編曲「別れのワルツ」は架空の”ユージン・コスマン楽団”なる名前でレコード発売され、大人気を博している。また劇中”幸せのお守り”として登場する「ビリケン人形」は1909年頃に米国から日本に伝わり、大阪の遊園地「新世界」で”足の裏をかいて笑えば願いが叶う”と名物になっている。”ビリケンさん”を発見した大阪人は小躍りして喜んだことだろう。1964年の東京オリンピック閉会式では照明を落とした後も大合唱「蛍の光」は中々消え入ることがなかった。今月の閉会式も楽しみである。 小堺