社長の呟き 2021年4月号「マスク時代」

はし休め

日本橋倶楽部会報4月号(第499号)
【四月号】 

「マスク時代」

                            
2020年の日本のマスク市場は5020億円、2019年の12倍の規模となり、「鬼滅の刃」に続く昨年のヒット商品2位となった。もちろん世界中でも巨大な市場となり、感染者の多いスペインでは一早く法律により、着用が義務化された程だ。しかし、かつて日本を訪れる外国人は日本人が日常マスクを着用する姿を異様に感じていた。米国では昔から口を覆うマスクは正に幌馬車を襲わんとするギャングを連想させ、目だけを覆う「ローンレンジャー」や「バットマン」だけがヒーローであった。欧州でもエドガー・アラン・ポーが小説「赤死病の仮面」の中でマスカレード(仮面舞踏会)に乗じて忍び寄るマスク(仮面)に隠れた疫病を描いている。一方日本では口だけを覆う「鞍馬天狗」や「月光仮面」は英雄だった。新型コロナは欧米の英雄の姿をも変えさせようとしている。先日、マスクを忘れたことに気付き、あわてて求めに入った店にはデザインに凝った布製マスクが展示されていた。ここまで商品が進歩したのかと、感慨深く手に取って肌ざわりを確かめようとした矢先、訝しげに近づいてきた店員が声をかけてきた。「女性用下着をお探しですか?」 マスクが無いと突然パニックに陥る。 小堺